2011/01/24

アメリカの大いなる田舎者

  
  フランスより HAT です。ビジネス・スクールに行こうと思うにはきっかけがある場合が多いだろうが、私の場合はアメリカでの勤務がきっかけだった。

  当時は債券営業担当だったのだが、同僚8人の内私以外は全員修士号取得者だった。ニューヨークというアメリカでも特異な世界にいたわけだが、そこで修士号がない人は日本における高卒のような立場で、待遇も与えられる仕事も余りおいしくなかった。

  結果的には周りと遜色ない成績を収めたのだが、やはり待遇面では明らかに冷遇されていたと思う。ニューヨークの金融界は修士号取得者が殆どで、取締役には博士号取得者も結構いた。ニューヨーカーは時に「アメリカの大いなる田舎者」と揶揄されるが、彼らにとってニューヨークが世界の中心であり全てであると勘違いしている部分は確かに見受けられた。

  但し、面白かったのはどこのビジネス・スクールを出ているかというのは、それほど重視されなかった点だ。一緒に働いていた人達の殆どが上位校出身ということもあっただろうが、誰がMBAホルダーかということは聞かされても、どの学校出身かというところまで知らなかったように感じる。

  日本の金融界の場合、特に銀行は国立大卒がトップを占めている場合が多い。中でもメガバンクの場合は東大卒が圧倒的に多く、その意味ではどこの学校出身かというは結構重要みたいだ。証券の場合はそうでもなくて、3大証券でも私立大卒の人がトップになっていることもあり、より実績が重視されるのだろう。

  フランスの場合はグランゼコールを出ていることが出世には必須で、それ以外の学校出身者はそもそも大手企業に入る門が閉ざされている場合が多い。グランゼコール出身者は年収70,000ユーロで働き始めるが、それ以外の大卒者は30,000ユーロのスタートということが公然と行われている。この点では日米よりも強い学歴社会で、18歳の時に受ける進学試験「バカロレア」が今後の人生の鍵を握ると言えよう。

  日本の場合、高卒者と大卒者の生涯賃金差が主要国で最も小さいことが確認されており、世界的にみるとそれほど学歴社会ではないと考えられる。日本でビジネススクールが普及しないのはこういった背景もあるのだろうが、海外で修士号取得者が大多数を占める現在においては日本も少しずつ変化していくものと思われる。

  日本の大手企業経営者にもMBAホールダーは増えてきているが、それを言わない場合もあり、これも日本特有だろう。海外の場合、MBAや博士号を持っていれば名刺にそう書いてあることも多く、文化の違いが見てとれる。国や地域が違えば教育への考え方も変わるものだ。

    

0 件のコメント:

コメントを投稿